新疆ウイグル自治区がパレスチナ化? 「偏見助長」する中国政府に西側メディアの不信感

産経新聞 2014.03.11

 中国雲南省の昆明駅で1日夜、利用客ら29人が死亡、143人が負傷した無差別殺傷事件は、治安当局が新(しん)疆(きょう)ウイグル自治区の独立勢力による犯行と断定したが、犯人の出身地や事件の背景など多くの情報は伏せられたままだ。西側メディアは中国側の透明性を欠いた対応が「ウイグル族はみなテロリストだとの偏見を助長している」と批判、国内からはチェチェン、パレスチナ紛争のような泥沼化を懸念する声が上がっている。(SANKEI EXPRESS)

昆明事件「諜報の失敗」

 香港紙の明報(電子版)は5日、実行犯4人を射殺したとされる特殊部隊メンバーの証言を掲載した。この隊員は現場到着後、天井に向かって2回威嚇射撃したが、犯人らが刃物を持って向かってきたため発砲したと説明。隊員が最初に撃ったのは痩せ細った女で、続いて男4人を銃撃した。女は被弾していったん倒れたが、再び刀を取って向かってきたところを取り押さえたとしている。

 この犯人は、16歳の少女だった。あどけない表情の頬に血のりがべったりと付いた顔写真がネットで広まると、中国社会は再び衝撃を受けた。

 「この事件は、完全に(治安当局の)インテリジェンス(諜報)の失敗だ」と断じるのは、シンガポールの南洋理工大学のロハン・グナラトナ教授。3日付のインターナショナル・ニューヨークタイムズによれば、グナラトナ氏は「新疆では直近の12カ月間で200以上の襲撃事件があり、ますます事態は悪くなっている」と危惧している。

西側メディア「偏見助長」

 さらに新疆大学の潘志平教授は、昨年10月に北京の天安門で発生したウイグル族による車両突入事件が「ターニングポイントだった」と指摘。2つの事件は「今後、あたかもロシアのチェチェン紛争のようにテロが自治区の外側に拡大していくことを示唆している」としている。

 中国メディアは昆明事件を「3・01」と呼んで2001年の米中枢同時テロ「9・11」と同列に論じているが、事件の基本的な情報を明らかにしない中国当局への西側メディアの不信感は根強い。

 6日付のインターナショナル・ニューヨークタイムズは、「より多くの情報を提供しないことで、中国政府はウイグル人がみなテロリストであるという偏見を助長している」(ポモナ大のドル・グラドニー教授)との専門家の指摘を紹介した。

 一方、中国側はこうした西側メディアの報道を苦々しく感じているようだ。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)は3日、「一部の西側メディアは暴力事件を非難しないばかりか、中国の“民族対立”を宣伝し、ウイグル分離勢力に同情すら示している」と報道。中国人民大学国際関係学院副院長の金爛栄氏は環球時報への寄稿記事で、米CNNなどが犯人について「テロ勢力」と引用符つきで報じたことに不満を示し、「『9・11』の際、中国が迅速にテロに対する非難声明を出したのとは大違いだ。西側はダブルスタンダードが甚だしい」と怒りをぶつけている。

「故郷が占領されている」

  「問題は事件そのものではなく、事件の背後に存在している」。少数民族問題に詳しい北京在住の作家、王力雄氏(60)は2日、ツイッターにこう書き込んだ。「新疆は目下、『パレスチナ化』の過程にある。新疆の漢民族は自覚しないまま、自らを弾圧者の位置に置いている」

 王氏は「ある忘れられないエピソード」を披(ひ)瀝(れき)する。知り合いのウイグル人青年に「メッカ巡礼に行きたくないのか」と尋ねたところ、こんな答えが返ってきたのだという。「寝ているときでも行きたいと思うほどだが、コーランの教えでは、故郷が敵に占領されているときは巡礼にいくことはできない」

 王氏はこう警鐘を鳴らす。「少数のテロ勢力が最大の問題なのではない。新疆の(ウイグル)民族全体が敵対勢力となること、これこそが最大の危険である」(国際アナリスト EX)

http://sankei.jp.msn.com/world/news/140311/chn14031109440002-n1.htm