[1964年]中国が初の核実験を行った

読売新聞 2011.10.16

「夜十一時すぎ外へ出てみると、核実験成功を報じる人民日報の号外売りが町中を走り回って興奮をあおっていた。ふだんはこの時間はもう人出もあまり多くないのだが、号外の音を聞いて家という家から人々が通りへ飛び出し、号外売りにかけ寄って奪いあうように活字に目を走らせていた」(1964年10月17日付、読売新聞夕刊)

中国が核実験に成功した日の北京の様子である。特派員は「異常な興奮ぶりにただ驚嘆するばかりだった」という。

実験が行われたのは、10月16日午後3時ごろだった。中国西部地域(新疆ウイグル自治区)で原子爆弾1個の爆発に成功した。

第2次大戦後、最終兵器である核兵器の開発は中国の悲願だった。朝鮮戦争や蒋介石率いる国民党との内戦の過程で、アメリカから原爆投下の脅しを何度も受けたからだった。核兵器を持つ国と持たざる国の違いを思い知らされた毛沢東は、経済発展に優先して核開発を進めた。

核実験成功後に発表された中国政府の声明の冒頭でも「これは中国人民が国防力を強化し、米帝国主義の核ペテンおよび核恐かつ政策に反対する闘争が勝ちとった重大な成果」とアメリカからの脅威に対し、自衛手段としての核兵器を開発したことを強調している。

中国は96年までに40回以上の核実験を行った。「核実験による周辺への悪影響はない」というのが中国政府の立場だ。しかし、核施設がある新疆ウイグル自治区のある村では、新生児の8割が障害を持っていたという。また、札幌医科大の高田純教授は、核実験でウイグル人19万人が急死し、129万人が急性の放射線障害を患ったという調査結果をまとめている。広島、長崎への原爆投下以来、負の連鎖が終わることはない。(治)

http://www.yomiuri.co.jp/otona/history/october/20111007-OYT8T00971.htm

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