中国がモスクを「閉鎖や破壊」 信仰の自由を抑制=国際人権団体

中国がモスクを「閉鎖や破壊」 信仰の自由を抑制=国際人権団体

中国がモスク(イスラム教の礼拝堂)を閉鎖あるいは破壊したり、別の目的で利用したりしているという報告書を、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が22日に発表した。

モスクに対する取り締まり行為は、中国でイスラム教の信仰を実践することを抑制するための「組織的取り組み」の一環だと、HRWは最新の報告書で指摘した。

中国には約2000万人のイスラム教徒がいる。同国は公式には無神論国家だが、信仰の自由を認めているとしている。

しかし専門家らは、中国では近年、組織化された宗教に対する取り締まりが強化されており、政府がより統制しようとしていると指摘している。

BBCはHRWの発表に先立ち、中国の外務省と民族問題委員会にコメントを求めている。

HRWの中国担当のマヤ・ワン局長代理は、「中国政府によるモスクの閉鎖や破壊、別の目的での利用は、中国でイスラム教の信仰を実践することを抑制するための組織的取り組みの一環」だと述べた。

今回の報告書が発表される前にも、中国北西部・新疆地区でイスラム系少数民族ウイグル族に対する組織的な人権侵害が起きていることを示す証拠が相次いで浮上している。中国政府はウイグル族に対する虐待を否定している。

モスクの象徴を撤去、礼拝堂を破壊

中国国内のイスラム教徒のほとんどは、新疆地区、青海省、甘粛省、寧夏回族自治区といった同国北西部で暮らしている。

HRWによると、イスラム教徒が住民の多数を占める、寧夏回族自治区の廖橋村では、六つのモスクのうち三つがドームとミナレット(塔)を撤去された。残りのモスクの礼拝堂も破壊されたという。

HRWが入手した衛星画像では、2018年10月から2020年1月にかけて、廖橋村のモスクの屋根がドーム型から中国式のパゴダに置き換えられているのがわかる。

寧夏回族自治区では2020年以降、約1300棟のモスクが閉鎖または改築されていると、中国のイスラム教徒を研究するハンナ・シーカー氏はBBCに述べた。この数は、同地域にある全てのモスクの3分の1にあたる。

中国文化と合致させようと

習近平国家主席の下、中国共産党は宗教を、政治イデオロギーや中国文化に沿うものにしようとしてきた。

中国共産党中央委員会は2018年、モスクの管理と統合に関する文書を発表した。省に対して「さらに多くの(モスクを)取り壊し、建設数を減らし、全体の数を減らすよう努力すること」を求めるものだった。

文書には、モスクの建設や配置、資金調達は「厳しく監視」されなければならないとある。

中国・新疆地区の使用されなくなったモスク

中国・新疆地区の使用されなくなったモスク

チベット自治区や新疆地区で最も長期的かつ深刻だったこうした弾圧は、ほかの地域にも及んでいる。

中国には二つの主要なイスラム民族が存在する。一つは、8世紀の唐の時代に中国へやって来たイスラム教徒の子孫にあたる回族。もう一つは、主に新疆地区で暮らすウイグル族だ。オーストラリア戦略政策研究所の報告書によると、2017年以降、新疆地区のモスクの約3分の2が損傷または破壊されている。

「一般的に言えば、寧夏回族自治区は『中国化』政策を実施するための試験場だ。それゆえに、改修や統合がほかの省に先駆けて始まっているようだ」と、前出のシーカー氏は言う。同氏は回族のイスラム教徒に関する報告書を、アメリカを拠点とする学者デイヴィッド・ストループ氏と共同執筆している。

「中国化」とは宗教的な信念を中国の文化や社会を反映したものに変えようとする、習氏の取り組みを指す。

中国政府はモスクの統合について、イスラム教徒の経済的負担を軽減するのに役立つと主張している。しかし、回族のイスラム教徒の中には、自分たちの忠誠心を共産党に向けるための取り組みの一環だと考える人もいる。こうした統合は、村の移転や統合の際にしばしば起こる。

「中国化」政策に公然と反対する住民もいるが、いまのところ彼らの抵抗は徒労に終わっている。彼らは何年もの間、モスクの閉鎖や取り壊しをめぐって当局と衝突し、大勢が投獄されたり拘束されたりしてきた。

アメリカを拠点とする回族活動家マ・ジュ氏によると、地方政府はモスクの外側の要素を取り除いた後、沐浴(もくよく)場や教壇といった宗教活動に不可欠な設備を撤去するのだという。

「人々が(モスクに)行かなくなると、(当局は)それを口実にモスクを閉鎖する」のだと、同氏はHRWの報告書の中で述べている。

HRWが検証した別の動画では、寧夏回族自治区南部のモスクで、二つのミナレットとドームが撤去されて間もなく、沐浴場が取り壊されていたことが示されている。

習近平氏の中央集権体制の下、共産党は宗教問題への介入を強めている

習近平氏の中央集権体制の下、共産党は宗教問題への介入を強めている

寧夏回族自治区と接する甘粛省では、当局がモスクの閉鎖や統合、改築を定期的に発表している。

当局は2018年、かつて中国の「小さなメッカ」として知られていた甘粛省臨夏市で、16歳未満の未成年者が宗教的な活動や学習に参加することを禁止した。地元テレビ局は2019年、当局が「丹念な思想教育と指導作業」を経て、いくつかのモスクを「ワークスペース」や「文化センター」に転換したと報じた。

「中国化」キャンペーンが始まる以前から、回族のイスラム教徒はさまざまな面で、国家から支援と奨励を受けてきたと、前出のシーカー氏は述べた。

「このキャンペーンは、中国国内でムスリムとしていられる空間を根本的に狭め、愛国心と宗教活動に関する非常に特殊なビジョンを支えるために、国家としての地位を利用している」

「イスラム教徒に何よりも愛国心を示すことを要求し、『外国』からの影響の兆候を脅威と見なすという点で、(中国の)イスラム嫌悪的な志向を深く反映するもの」だと、シーカー氏は述べた。

HRWのエレイン・ピアソン・アジア局長は、世界中のアラブ人やイスラム教徒の指導者たちは「疑問を投げかけ、懸念を表明する」べきだとした。

ほかの民族や宗教的少数派も、この中国政府のキャンペーンの影響を受けている。

中国政府はここ数カ月、公式の外交文書における「チベット」の表記を「シーザン」(Xizang)に置き換えている。これは、チベットを指す中国語「西蔵」の発音に当たる。当局はまた、キリスト教会から十字架を撤去し、牧師らを逮捕し、オンラインショップでの聖書の販売を取り下げている。

(英語記事 China accused of closing and destroying mosques