「中国政府は言論・宗教を抑圧」 米国が中国人権報告書発表

産経新聞 2009.10.17 19:11

【ワシントン=古森義久】米国の行政府と立法府が合同で、中国の人権状況が米中関係にどう影響するかを調べる「中国に関する議会・政府委員会」(委員長・バイロン・ドーガン上院議員)は16日、2009年度の調査報告書を発表した。同報告書は中国政府が自国民の言論、宗教、居住の自由などを体系的に抑圧し、チベットやウイグルの少数民族をも激しく弾圧しているとして、その具体例を多数提示した。

同委員会は、中国の人権や法の統治への抑圧が中国の米国や国際社会への関与に悪影響を与えるという見地から、中国国内の状況を広範に調べ、毎年、年次報告としてまとめて、米国の政府や議会への対策を勧告している。

同報告書は総括として「中国共産党政権は法の統治を実行せず、透明で参加可能な、一貫性のある国家法的システムは存在しない」と述べる一方、「中国政府は国民の言論、結社、宗教などの自由を抑圧している」と述べ、現状だと中国は米国との円滑な関係保持や国際社会への参加ができないことになる、と警告した。

同報告書はとくに中国政府が現在の抑圧政策を大幅に改めない限り、米中両国政府が今年7月に結んだ気候変動への対応の協力に関する覚書も履行できないだろうとして、いまの中国政府が気候変動などへの対応の基礎となる科学的データまで政府の都合に合わせて改変している、と批判した。

今年夏の新疆ウイグル自治区での「暴動」については、7月5日の騒動以前から中国政府がウイグル人の少数民族としての権利を侵害し、同日、ウイグル人側が抗議のデモを実施したのを当局が強硬に弾圧したことが大規模な衝突の原因になったという見解を示した。チベットについても「中国政府がチベット人の言語、文化、伝統を抑圧し、とくに宗教面で年来のチベット仏教を変質させようとした」ことがチベット人側の反発の理由だと述べた。

同報告書はまた、米国側の独自の調査で中国側の政治犯と宗教犯のうち少なくとも5176人の身元情報などをつかみ、データベースを作成した、と発表した。同委員会の見解としてはこれら政治犯、宗教犯は中国内部の正規の逮捕や判決の手続きをも踏んでおらず、懲罰を加えること自体が不当だとみなしている。

言論の自由の抑圧について同報告書は、中国共産党政権が(1)社会の安定を口実に国内メディアへの検閲や規制をなお強め、自由を大幅に抑えている(2)国内のインターネットを常時監視して、特定の主張への懲罰や特定サイトの閉鎖を頻繁に実施している(3)中国国内で活動する外国メディアに対しても監視や圧力を絶やさない-ことなどを指摘し、言論や報道の自由の回復を求めた。

http://sankei.jp.msn.com/world/america/091017/amr0910171912007-n1.htm