「外国人もモノ言えぬ中国」 容赦ない拘束、国外退去

ニュースソクラ 2016.02.02

日本人やスウェーデン人、米国人など拘束次々

 中国での言論弾圧が、外国人にまで及んでいる。1月19日夜、中国当局に拘束されていた人権活動家のスウェーデン男性が中国中央テレビに出演し、「謝罪」を行った。

 謝罪を行ったピーター・ダーリン氏は、中国の人権活動家に法的援助などを提供している米NGO「チャイニーズ・アージェント・アクション・ワーキング・グループ(チャイナ・アクション)」のメンバーだ。同氏は1月4日、中国当局に拘束されていた。スウェーデン外務省は25日、同氏が釈放されたと発表している。

 国営の新華社通信によると、同氏の所属する「チャイナ・アクション」は海外から多額の資金を受け取り、中国の人権に関する虚偽の情報を国外に流していたという。ダーリン氏の恋人の中国人女性も行方が分からなくなっており、刑事拘留されているのではないかと考えられている。

 ダーリン氏は、「中国政府や中国国民の感情を傷つけたことを心から謝罪する」と述べ、これまでに支援した活動家3人の名前を挙げた。3人は既に中国当局に拘束されている。チャイナ・アクションはダーリン氏の容疑について、事実無根だと主張している。

 昨年から、中国による外国人拘束、逮捕が相次いでいる。昨年9月には日本人2人が、それぞれ北朝鮮国境付近と、浙江省の軍事施設付近で拘束されていたと明らかになった。昨年6月に上海で拘束された日本語学校幹部の女性は、11月正式に逮捕されている。同じく6月に北京で拘束された男性は、脱北者の援助を行っていたとされており、刑事勾留とされている。

 9月には、米国人女性が当局によってスパイ容疑で逮捕されている。ベトナム出身の企業家サンディ・ファンギリス氏は、昨年3月、ビジネス訪問団の一員として訪中した際に広東省マカオの出国ゲートにて拘束され、9月までの半年間軟禁状態に置かれた後、正式に逮捕された。

 12月には、フランス人記者ウルスラ・ゴーティエ氏が、ニュース誌「L’Obs」に掲載した記事についての謝罪を拒否し、国外退去となった。ゴーティエ氏の記事によれば、習近平中国国家主席がフランスのオランド大統領と会談し、テロとの戦いでフランスに協力すると述べた数時間後、ウイグルのテロ容疑者の逮捕が発表された。

 新疆ウイグル自治区では9月、炭鉱が襲撃され46人が死傷する事件があり、ウイグル族出身の9人が指名手配されていた。ゴーティエ氏は記事内で、逮捕には「裏の意図があるのではないか」とコメントしていた。中国当局は、記事が「暴力行為を正当化するもの」とし、謝罪をしなければゴーティエ氏の記者証の更新を拒否するとしたが、同氏は謝罪をせず、今年1月に事実上の国外退去処分となった。

 中国人向けの言論統制の動きはさらに顕著だ。ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、少なくとも、2015年7月から9月にかけて300人以上の中国人弁護士、弁護士助手、人権活動家などが、警察当局によって拘束された。うち少なくとも11人が正式に逮捕されており、罪状は「国家政権転覆罪」が6人、「国家政権転覆扇動罪」が4人、「証拠隠滅幇助罪」が1人だという。「国家政権転覆罪」は首謀者と認定されれば、終身刑が下される場合もある。

 習近平政権誕生以来、2014年11月に「反スパイ法」が制定されるなど、言論の自由への締め付けが強まっている。2015年9月には、50の報道機関が「党と国家の印象を損なうような意見を発表あるいは広める」ことはしないとする」自主規制協定に署名し、10月には政府の政策に対する党員の否定的発言を禁じる行動規約が承認された。

 1月17日には失踪していた香港の出版社株主が、飲酒運転による死亡事故に関与したとして、中国公安当局に出頭したとの報道があった。翌18日、同じく失踪していた書店株主が中国本土にいると発表された。中国指導者を批判する書籍を扱う、香港の「銅鑼湾(トンローワン)書店」関係者では、さらに3人の行方が分からなくなっている。

 昨年8月には、天津での爆発事故や「抗日勝利70周年記念式典」などについてインターネット上で誤ったうわさを広めたとして、200人近くが罰を受けたと報じられた。中国国内の言論統制の対象は、党員やメディアから一般国民にまで及んでいる。

 こうした動きの背景として、英国のエコノミスト誌は、中国経済の減速があると分析する。経済成長の低速化が国民の不満につながり、党の支配体制に影響をあたえかねないとの不安が、言論統制の強化につながっているという。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160202-00010002-socra-int