ウイグル族弾圧 人権踏みにじる同化政策

ウイグル族弾圧 人権踏みにじる同化政策

ソース:Nishi Nippon

中国政府の少数民族に対する人権侵害が深刻だ。生命も脅かす過酷な境遇に追いやられた人々が長きにわたり、国内外で悲痛な声を上げている。断じて許されない人道問題である。

とりわけ今、国際社会の関心を集めているのが新疆ウイグル自治区のウイグル族らへの弾圧だ。米国のバイデン大統領は先日、中国の習近平国家主席との電話会談で懸念を伝えた。

米国はトランプ前政権末期にウイグル族らへの弾圧を国際法上の犯罪となる「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と初めて認定した。バイデン政権もこれを継承している。中国政府が100万人以上を強制収容し、本人の意思に反した不妊手術や労働を課しているという。

本紙の取材で、2014~18年に自治区内で不妊手術を受けた住民は約10万人に及び、年間件数は5年間で18倍に増えていたことが分かった。公的資料に記載されたデータである。中央政府が16年に「一人っ子政策」を廃止して出産を奨励する中、この突出した増え方は異様だ。非人道的な人口抑制策が実施されているのは明らかだろう。

中国は一連の指摘を否定し「人権を名目にした内政干渉」と反論する。それならば積極的に情報を公開し、説明する責任があろう。自治区に海外メディアが入っても常時監視され、取材は極めて困難だ。隠したい何かがある証左にほかならない。

自治区では過去、独立運動が活発になり、テロや暴動も繰り返された。ウイグル族は大半がイスラム教を信仰し、漢族とは言語も文化習慣も異なる。中央アジアや中東ともつながっているだけに中国政府は神経をとがらせてきた。特に習指導部は厳しい監視態勢を敷き、同化政策を進める。「テロ防止」を理由にしているが、とても額面通りには受け取れない。

このほか内モンゴル自治区や吉林省でも、昨秋から少数民族が通う小中学校でモンゴル語や朝鮮語など母語を使う授業が大幅に減り、漢語教育が強化された。この政策に異議を唱えた人々が次々と拘束されている。

民族や個人の尊厳に関わる重大問題である。国際社会が懸念するのもそうした点だ。欧州連合(EU)は中国に国際調査団受け入れを求め、人権擁護団体からは来年の北京冬季五輪ボイコットを呼び掛ける声も出る。

弾圧は憎しみを増幅し暴力の連鎖を生みかねない。多民族国家である中国は融和を図り、安定した社会を目指してほしい。

香港の民主派に対する弾圧も苛烈だ。中国が国際社会から信頼を得るには人権問題の解決が不可欠である。日本はそう認識するよう働き掛けるべきだ。