ウルムチ暴動2年 民族間、不信根強く 当局、監視カメラ1万7000台

毎日新聞 2011.07.04

【北京・工藤哲】少なくとも200人の死者を出した中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市の大規模暴動の発生から今月5日で2年を迎える。観光客も少しずつ増え始め、市街地は一見、平静を取り戻したかのようにみえる。だが、1万7000台以上とされる監視カメラが目を光らせ、中国当局によるウイグル族の不穏な動きの監視が続いているのが実態だ。事件の背景となった漢族とウイグル族との間にある根深い不信感は、今も払拭(ふっしょく)されていない。

「観光客は去年の2倍くらい。少しずつ戻り始めた」。現地の飲食業者は胸をなで下ろす。地元観光業者の間では「暴動発生前の状況に戻った」との声も出始めた。日本外務省は5月12日、インターネットなどの通信手段の遮断がなくなり、暴動が再発する可能性も低くなったとして、邦人向け海外危険情報を「渡航の是非を検討」から1段階下げ、カテゴリーでは最も低い「十分注意」とした。

しかし、中国当局による住民への監視は続く。「警察官の数が増えた。5人1組の隊列になって街中を巡視している」。ウルムチ市に住む留学生の日本人男性(31)は、暴動発生現場周辺の様子について語る。中心地の市場周辺は監視カメラが設置されており、カメラが発する光は「雷と勘違いするほど」だという。

米政府系放送「ボイス・オブ・アメリカ」(VOA)によると、中国当局は昨年、ウルムチ市内に約1万7000台の監視カメラを配置し、さらに増やす方針を示している。ウルムチ市幹部は「今後は全市内で監視の漏れがなくなるだろう」としたうえで「3400台の公共バス、4400本の大通り、170の学校、100の商店がカメラで映されている」と語った。

同自治区では、共産党指導部の視察も続いた。5~6月にかけ、賀国強・政治局常務委員や公安部門担当の周永康・政治局常務委員が自治区を訪問し、民族団結や社会管理の徹底などを訴えた。共産党創建90周年の記念日(7月1日)や暴動から2年という節目を前に、引き締めを図ったとみられる。

こうした中、ウイグル族の間では漢族への不満の声が高まっている。日本でウイグル族の現状を伝えている同自治区出身の会社員、トゥール・ムハメットさん(46)は「ウルムチに住むウイグル族は『監視が厳しくなった。漢族はウイグル族の店に来なくなり、部屋も貸さない。差別は続いている』と訴えている」と現状を明かした。

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■ことば

◇ウルムチ暴動

09年7月5日、中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市で起きたウイグル族による大規模暴動。広東省の工場でウイグル族が漢族に襲撃され、死亡した事件への抗議行動をきっかけに発生した。中国当局の発表で約200人が死亡、約1700人が負傷。暴動後2000人以上のウイグル族が連行され、30人以上に死刑判決が言い渡された。海外の亡命ウイグル人組織は「死者は1000人から最大3000人」としている。

http://mainichi.jp/select/world/news/20110705ddm007030123000c.html