中国の核弾頭は3000発?学生暴く 推計大きく上回る可能性

産経新聞 2011.12.05

中国が保有する戦略核弾頭数は現在推計されている数をはるかに上回り、最大で3000発にも及び、米露両核大国が現在配備している数よりも多い可能性があるとする研究結果を米国の大学生グループが発表した。研究の報告書は公開前だが、米連邦議会では公聴会が開かれ、コピーを閲覧した国防総省のアナリストたちの注目を集めている。軍拡路線を突き進む中国の秘密の核戦力が暴かれたのか。

米紙ワシントン・ポスト(WP)によると、この研究はジョージタウン大学(ワシントンDC)の学生たちが、国防総省の元高官で冷戦時代に共和党の政策スタッフとして核戦略研究に携わったフィリップ・カーバー教授(65)の指導で行ったもの。中国人民解放軍の戦略ミサイル部隊である第2砲兵部隊が掘った「地下の万里の長城」とも呼ばれる秘密のトンネル網について、363ページの報告書にまとめた。

研究の基になる情報は、通常は中国軍関係者でなければ入手できない第2砲兵部隊が作成した400ページに及ぶマニュアル書や、インターネット検索大手グーグルの3D地図サービス「グーグル・アース」、軍事専門誌、中国のTVドラマなどから得たとしており、マニュアル書の解析を除くと、主に公開されている断片情報を集積・分析したという。国防総省の戦略担当者はWP紙に「報告書で示されている見解や推計について、機密情報に基づいてこれまで既知とされてきた事柄と照合中だ」と述べている。

地下トンネルは核兵器を収容することが主目的とされる。カーバー教授は、2008年5月の四川大地震の報道で映し出された崩落した大地の状況や、当時、大量の核技術者が四川に動員された事実などから、秘密の地下トンネルの存在を確信。折に触れて指摘すると、09年12月に中国軍は公式にトンネルの存在を認め、距離はほぼ5000キロに及ぶことも明かした。

中国が保有する戦略核弾頭数はこれまで、400発程度(うち実戦配備は200発弱)と推定されてきた。しかし、カーバー教授は「400発とすると、1発の核弾頭のために10キロ以上のトンネルを掘ったことになり、常識では考えにくい。諸情報も付き合わせると、最大で3000発保有している可能性がある」と推計している。

中国の核戦略は、先制核攻撃を受けても、報復核攻撃によって相手に甚大な打撃を与える能力を確保することで先制攻撃を防ぐ「最小限抑止戦略」が基本になっている。中国は、米国のほぼ全土を射程に収める多弾頭の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「東風31A」などを保有しているが、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の開発が不十分なため、強力な反撃能力の生残性を高めるため、長大な地下トンネルを築いたとみられる。

だが、保有弾頭数が3000発にも及ぶとなれば、現在米露両国の主導で進められている戦略核軍縮のスキームにほころびが生じかねない。冷戦時代にはともに1万発以上の戦略核弾頭を保有していた米露は今年2月、互いの配備戦略核弾頭を18年までに1550発以下に削減する新戦略兵器削減条約(新START)を発効させたが、1550の拠り所は「米露以外の核保有国が持つ弾頭数の総数をやや上回る数」というものだ。400発のつもりが3000発では、根底から概念が崩れ、米露が削減する中、核保有五大国で唯一、中国が核戦力を増強していることに批判が強まるのは必至だ。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/111205/chn11120508180002-n1.htm

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