中国、パキスタンにウラン 82年に提供と米紙報道

朝日新聞 2009.11.13

【ワシントン=勝田敏彦】米紙ワシントン・ポスト(電子版)は13日付で、いわゆる「核の闇市場」を主導したパキスタンの科学者カーン博士が書いた文書の記載として、1982年に中国からパキスタンに原爆2個分の高濃縮ウランが提供されていたと報じた。事実だとすれば、「他国の核開発には一切協力していない」とする中国のこれまでの主張が崩れることになる。

報道によると、ウラン提供は、カーン博士がオランダの遠心分離機製造企業で働いた経験で得たウラン濃縮のノウハウを中国に提供する見返りとして行われた。この取引は、76年半ばに中国・毛沢東主席とパキスタンのズルフィカル・アリ・ブット首相(いずれも当時)の会談で合意されたという。

中国はまず低濃縮の六フッ化ウランを提供しパキスタンも自国施設で濃縮を始めたが、イスラエルやインドによる核攻撃の可能性が高まったとして、2、3個の原爆をつくるのに十分な量の兵器級の高濃縮ウランの「貸し出し」を中国に依頼した。

依頼を当時の最高実力者、トウ小平氏は承認。カーン博士らは82年、パキスタン軍の輸送機で中国・新疆(しんきょう)ウイグル自治区のウルムチに向かい、原爆2個分に相当する兵器級ウラン50キロを入れた金属製の箱五つと、原爆の設計図を受け取ったという。

カーン博士らはこのウランを85年まで保管。結局、自前で濃縮したウランで原爆の製造に成功し、受け取ったウランの返還を申し出たが、中国側は「贈り物として取っておいてほしい」と回答してきたという。

また報道によると、米当局は早い時期から一連の事実を把握し、中国に説明を求めたことがあった。中国が否定すると、その後は問題にしていなかったが、中国を来週訪問するオバマ大統領は、核不拡散の問題も協議するとみられている。

同紙は、文書をカーン博士と交流がある英紙フィナンシャル・タイムズの元記者から入手。本物であることは別ルートで確認したとしている。

http://www.asahi.com/international/update/1113/TKY200911130412.html

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