「人権の改善 日中首脳会談で議題に」世界ウイグル会議の事務局長

産経新聞 2008.5.2 00:40

中国でのチベット騒乱が注目を集める中、亡命ウイグル人らの国際組織、世界ウイグル会議の事務局長、ドルクン・エイサ氏が来日を機に産経新聞のインタビューに応じ、中国当局によるウイグル人弾圧の実態を詳細に語り、「北京で五輪を開催させるべきではない」と訴えた。

私の故郷は新疆ウイグル自治区と呼ばれていますが、私たちは「東トルキスタン」と呼びます。中国は建国後60年間にわたり、この土地を侵略し、略奪の限りを尽くしてきたことをぜひ理解してほしい。裕福な人は「反革命分子」として土地を奪われ、中国に反発する人は「分裂独立主義者」として投獄され、虐殺されてきたのです。

私は88年、学生運動を指導して大学を除籍され、北京に移り住んだが、ウイグルの公安当局の手が伸び、94年にトルコに逃れました。以来一度も故郷の土は踏んでいません。

私たちウイグル人へのレッテルは時代によって変遷しています。2001年9月11日の米中枢同時テロ後、中国当局は私たちがイスラム教徒であることを理由に「テロリスト」のレッテルを張って迫害するようになりました。

でも考えてください。無防備な姿でデモをする人々と、武器を持って弾圧する人のどちらがテロリストなのか。ウイグル人はチベット人と同様に中国の国家的テロに遭っているのです。

これまで中国当局による迫害を受け、処刑されたウイグル人はわれわれが得た情報では60万人に上ります。最近でもっとも凄惨(せいさん)な事件は97年2月のグルジャ市の大虐殺でしょう。ラマダン(断食月)前夜祭で知人宅に集まり、食事していた女性10数人を公安当局は「不穏な集会」として連行しました。市民が彼女らの解放を求めると当局は約300人を射殺したのです。今年の追悼集会でも18人が殺されました。90年4月には西部のカシュガル市近くの村で宗教弾圧への抵抗組織の存在を知った当局が子供を含む8000人を殺害したといわれています。

弾圧や虐殺だけではありません。中国は64年から96年まで46回も自治区内で核実験を行い、多くの人々が死亡し、放射能の影響は現在でも残っています。

一方、中国政府は移民政策を進め、49年ごろ人口の2%だった漢民族は現在5割を超えました。「一人っ子政策」によりウイグル人は初産から5年たてば2人目を産むことが認められていますが、もし5年以内に妊娠すれば妊娠9カ月であっても堕胎させられます。それが原因で母子が死亡した例も少なくありません。

文化的迫害もひどい。03年から大学でのウイグル語による授業を禁じ、05年からは幼稚園や小中学校でも禁じられた。ウイグル独特の建造物は壊され、中国的な毒々しい建築物が次々に建てられています。中国はウイグル人を根絶やしにしようとしているのです。

このような国で五輪を開催してはなりません。五輪開催決定後、中国は明らかに迫害を強めました。このままではウイグル人は絶滅し、シルクロード文化は博物館でしか知ることができなくなるでしょう。

福田康夫首相にはぜひウイグルの現状を知ってもらい、胡錦濤国家主席に人権状況の改善を求めてもらいたい。世界で最も自由と民主主義が発達した日本は、それにふさわしいメッセージを出す必要があります。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080502/plc0805020044000-n1.htm