漢族・ウイグル族 対立激化 自治区外でも「聖戦」

東京新聞 2014.03.21

 【北京=白石徹】中国公安省は多くの少数民族が暮らす国境地帯の治安維持のため、共産党と政府、武装警察、公安(警察)、予備役が「五位一体」となり、新疆ウイグル自治区などで頻発する騒乱に厳しく対処することを確認した。二十日付の法制日報が伝えた。漢族とウイグル族の対立はイスラム教徒のジハード(聖戦)による「民族紛争」に変質し始めており、当局は引き締めに躍起だ。

 雲南省昆明駅で今月一日に起きたウイグル族による無差別殺傷事件では、二十九人の漢族が死亡、百四十三人が重軽傷を負った。警察は現場で四人を射殺し一人を拘束、三人を逮捕。だが、この三人は事件発生二日前に拘束されていたことが明らかになり、捜査の信ぴょう性が疑われている。

 ウイグル自治区当局は、二〇一二年に自治区内で発生した「テロ事件」が百九十件を超えたことを認め、年々大幅に増えていることを裏付けた。一方、犯行は雲南省だけでなく、北京の天安門前で昨年十月末、車両が衝突・炎上する事件も発生。「テロ事件」は全土に拡大している。

 天安門前の事件ではウイグル族男性と妻、母親が乗車しており、警察当局に息子を殺害されたことが犯行の動機ともされ「報復の連鎖」になる恐れも。

 広州市で十五日、四川省成都市では十四日、「(ウイグル族の)通り魔だ」とのデマの叫びを聞いた市民が逃げ惑う騒ぎがあり、互いの不信感も強まる。

 公安当局は大半の事件に独立組織「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」の関与を主張。しかし犯行声明が出されたことはない。人民日報系の日刊紙は十九日、「ETIMが昆明テロ事件に支持表明」と報道。「支持」はするものの「実行犯」ではないことを印象付けてしまった。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2014032102000145.html